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中学校 技術・家庭科 NEWS

キユーピーの「食べる力」を育む食育

マヨネーズとドレッシングでトップシェアを誇る食品メーカー、キユーピー。
「食を通じて社会に貢献する」ことを目指し、早くからサステナビリティや食育に向き合ってきました。
今回は、中学校の家庭科の先生に向けて、キユーピーのさまざまな取り組みについて広報の方々へおうかがいしたインタビューをお届けします。

 

食のトレンドは「タイパ」と「サステナビリティ」

――最近の食のトレンドについて、どのように考えていますか?

キユーピーは売上やお客様の声を参考にするのはもちろん、スーパーやレストランを視察してトレンドをリサーチしています。

少し前までは、お得感を重視する「コスパ」や、手間をかけずにすぐ食べられることを重視する「時短」がトレンドでした。
最近は「タイパ(タイムパフォーマンス)」がトレンドで、価格やスピードだけでなく、味や栄養バランスも求められていると感じます。
たとえば、耐熱容器と電子レンジでパスタをゆでる調理方法は一般的になってきましたよね。
キユーピーはゆでたパスタにかけるだけでおいしく食べられるパスタソースを販売していますが、部活動や塾で忙しい中高生でもパパッと自分で調理できる便利さから、ファミリー層に人気があります。

また、中学生や高校生のみなさんは、商品を選ぶときに「サステナビリティ」を意識されているように感じます。
学習の中でSDGsにふれる機会が多いことも影響しているのかもしれません。
キユーピーでも、豆乳やみそを使用したシーザーサラダドレッシング、卵を使用しないマヨネーズ風調味料、大豆ミートのミートソースなどの「プラントベースフード(植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せてつくられている食品)」のブランドを展開しています。

 

――キユーピーはいつごろからサステナビリティのための活動に取り組んでいますか?

キユーピーは1919年に創業し、1925年に日本で初めてマヨネーズを製造・販売し始めました。
当初から卵黄タイプのマヨネーズ(卵の黄身だけを使用した栄養価が高いマヨネーズ)をつくっているのですが、そのときから残った卵白や卵殻をどのように有効活用するか模索し続けています。
当時は、卵白を詰めた一升瓶を持って近所の会社へ相談にたずねていたときいています。
その後も、天日で干した卵殻を土壌改良材として農家に販売するなどしていたそうです。

現在、キユーピーで取り扱っている卵の量は年間約42億個(約25万トン)です。
これは、日本で生産される卵の約10%に相当します。
さらにそのうちの30%が卵黄です。70%は卵白、卵殻、卵殻膜などです。
そこでキユーピーでは、卵白はお菓子・かまぼこ・ハム、卵殻はカルシウム強化商品、卵殻膜は化粧品など、卵を100%有効活用できるよう日々研究を重ねています。

サステナビリティの基本方針に沿い、全社をあげて重点課題に取り組んでいます。

 

長年続ける「オープンキッチン」

――キユーピーは、工場・施設の見学、オンライン見学、出前授業、講演会、ウェブコンテンツなど、さまざまな食育活動を展開していますね。中学校の家庭科の先生におすすめしたいものはありますか?

どれもおすすめしたいのですが、ぜひ工場見学は参加していただきたいです。

キユーピーでは「工場は家庭の台所の延長」という考えから、工場見学を「オープンキッチン」と呼んでいます。
1961年に地元の小学校からの希望に応えて社会科見学を実施したことがきっかけで始めたときいています。
当時の食品業界では、生産現場を公開する企業は多くなかったのではないでしょうか。

オープンキッチンでは、内容は工場ごとに異なるのですが、マヨネーズやドレッシングの生産から箱詰めまでの様子や、製造工程を機械化・自動化するシステム、環境への配慮などについてご紹介しています。
2019年までは年間約9万人の見学者を受け入れていましたが、2020年に新型コロナウイルス感染症の流行より一時中止してしまいました。
しかし、お客様との接点をもち続けたいと考え、オンラインでのオープンキッチンをスタートしました。
工場をリアルタイムで中継し、いただいたご質問にはその場でお答えしています。
オンラインで実施したところ、遠方や海外の方々など、これまで工場に来られなかった方々にも参加いただくことができました。
そういったお客様のために、工場見学再開後も、オンラインでのオープンキッチンは一部で継続しています。
たくさんの方々にキユーピーのものづくりへ興味や信頼をもっていただけているな、と手応えを感じています。

現在は、茨城県の五霞工場、兵庫県の神戸工場、佐賀県の鳥栖工場の3工場が、無料で見学が可能です。
「時間はとれないけれど、生徒に食品の生産現場を見てほしい」とお考えの家庭科の先生には、ぜひ教室から参加できるオンラインオープンキッチンについてご相談ください。

 

「食生活アカデミー」で「食べる力」を育む

――キユーピーの食育活動の一環であるウェブコンテンツ「食生活アカデミー」について教えてください。

「食生活アカデミー」では、学習指導要領や小学校家庭科、中学校技術・家庭(家庭分野)の教科書に基づきながら、キユーピー独自の知見を交えて、食生活に関するさまざまな情報を提供しています。

以前、家庭科の先生にお話をお伺いしたとき、「食べ物が何からつくられているのか知らない生徒がいる」ということを心配されていました。
たとえば、カレーライスや豆腐は身近だけれど材料のことは知らない、といった感じです。
そのような背景から、「食生活アカデミー」は子どもたちの「食べる力」を育むことを趣旨としています。

食育で育てたい「食べる力」

1.心と身体の健康を維持できる
2.食事の重要性や楽しさを理解する
3.食べ物の選択や食事づくりができる
4.一緒に食べたい人がいる(社会性)
5.日本の食文化を理解し伝えることができる
6.食べ物やつくる人への感謝の心

食育、知っていますか?:農林水産省

 

食生活アカデミーでは食生活に関する情報を、5つのテーマに分けて掲載しています。
コンテンツ例といっしょにご紹介します。

つくる・食べる:つくること、食べることについての、さまざまな方法や知識を紹介します。

卵を落とす高さが決め手!? 基本の目玉焼きをつくろう!

トロトロ?固ゆで?ゆで卵をつくってみよう!

 

からだと栄養素:私のからだをつくる、食べものと栄養素のはたらきについて紹介します。

献立を考えよう!栄養バランスをよりよくするコツ

6つの基礎食品群でバランスのよい食事を考えてみよう!

 

食生活のぎもん:食生活の気になることを考えてみましょう。

食べもの大変身!食品の元の姿を考えてみよう

ふむふむ、なるほど、食生活クイズ2022

ふむふむ、なるほど、野菜クイズ

 

食べものとSDGs:未来の食生活のために、私たちができることを考えていきましょう。

動画で学ぼう!“もったいない”を価値あるものへ

Q&Aで考えてみよう!SDGsと食生活のぎもん

 

自由研究:夏休み期間に自由研究の作品を募集しています。テーマ例や自由研究の進め方、受賞作品も紹介します。

キユーピーの自由研究

 

コンテンツは定期的に追加しています。
教科書より発展的な内容を教えたい先生や、知的好奇心旺盛な生徒さんにぜひご活用いただきたいです。

 

――なぜ、学習指導要領や教科書を参考にしたのですか?

「今の小学生・中学生の子どもたちに役立つ情報を提供したい! しかし、学びに求められているものはなんだろうか?」と考えたときに、学習指導要領や教科書はとても参考になりました。
主に東京都の小学校・中学校で採択されている教科書を参考にしており、教育図書の教科書も見ています。

紙とは違い、最新の情報を適切なタイミングで発信できる、いろいろな情報へリンクさせやすいなどの利点から、「食生活アカデミー」はウェブメディアという媒体を選びました。
学習指導要領や教科書に掲載されている学習内容をベースにしつつキユーピーならではの情報を提供する、キユーピーが伝えたいことが先生や生徒のみなさんにとっても価値があるものにする、という方針で、今後も引き続きコンテンツを充実させていきたいと考えています。

 

――家庭科を学んで「食べる力」を身につける中学生のみなさんに期待することはなんでしょうか?

「今食べているものが、10年後の自分のからだをつくる」といわれていますので、中学生のみなさんはとても大事な時期に家庭科を学んでいると思います。

食品メーカーとして、「食べる力」は本当に大切だと考えています。
食は生きていく上での基本ですよね。
食生活を学ぶことは健康や幸福につながるだけでなく、社会課題の解決を考える入り口にもなるのではないでしょうか。
おいしく楽しくごはんを食べることが、SDGsの目標達成につながるイメージです。
今、家庭科を学んでいる中学生のみなさんが、大人になってからも「食べる力」を磨き続けてくれたら、とてもうれしいです。

 

野菜をおいしく食べるコツ

――キユーピーといえば、「マヨネーズ」「ドレッシング」そして「野菜をおいしく食べる」というイメージがあります。野菜をおいしく食べるために発信している情報にはどのようなものがありますか?

 

まず、子どもの野菜嫌いのお悩みを解決するウェブサイト「子どもと野菜をたのしもう」では、子どもが野菜を苦手に感じる理由と対策、野菜を食べたくなる調理の工夫や演出、おすすめのレシピなどを公開しています。

 

また、埼玉県深谷市に「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」という、農園とマルシェとレストランが一体となった施設をつくりました。
そこで野菜を収穫する体験プログラムを実施していますが、やはり自分の手で収穫した野菜はおいしいと感じていただけているようですね。

 

ほかにも、マヨネーズやドレッシングをかけると野菜の苦みが低減することのエビデンスとなる研究結果も発表しています。

ピーマンの苦味を感じるメカニズムの一端を解明同時に卵黄タンパク質がピーマンの苦味を抑制する可能性も示唆 | ニュースリリース | キユーピー

 

――野菜が苦手な子でもおいしく食べるために、今すぐできることはありますか?

調理方法を変えると味や食感が変わるので、食べられるようになるものもあると思います。
あと、旬の時期の野菜は本当においしいので、ぜひ食べてほしいですね。
義務感なく、食べるのが楽しみになるのがポイントです。

 

キユーピーのおすすめレシピ

最後に、野菜をおいしく食べられて、中学生でも簡単につくれる、おすすめの時短レシピを教えていただきました。
ぜひトライしてみてください。

 

キャベツと鶏むね肉とたまごのレモンマヨソテー

 

豚肉とほうれん草のチャーハン

 


 

キユーピーのみなさん、ありがとうございました!

 

佐藤香奈子

キユーピー株式会社 広報・グループコミュニケーション室 コミュニケーション企画チーム チームリーダー
「生野菜にベーコンやサラダチキン、ゆで卵などを豪華に盛りつけたサラダが大好きです」

原貴子

キユーピー株式会社 広報・グループコミュニケーション室 社会・食育チーム チームリーダー
「味や香りが苦手だった野菜も、調理の工夫で食べられるようになりました」

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